昭和の長寿テレビ番組『8時だヨ! 全員集合』(1969~1985年)などで人気を博したザ・ドリフターズのメンバーで、タレントの仲本工事さん(81歳)が、10月19日に急性硬膜下血腫で死去しました。18日午前9時過ぎに横浜市西区の横断歩道のない道路(横断禁止)を歩いて向こうに渡ろうとしたところ、70代男性の運転する乗用車にはねられて頭を強打して重傷を負い、病院で治療中のことでした。
バク転・バック転のイラスト 高校時代は体操部で活躍し、ドリフターズのコントでも、キレのある動きが観客を喜ばせました。特に、バック転や側転、舞台上を走ってきてズルっとコケる(転倒する)しぐさは見事で定評がありました。

 車の往来が激しい故に「横断禁止」の標識が立てられた道路を歩いて渡ったのが、今回の不幸な事故の第一義的な原因です。まずは、そのことを共通認識しておくことが重要です。そして、これらに加えて高齢者のからだの機能の衰えが原因として大きく関わっているのです。つまり、この道路を横断することの是非、タイミング、所要時間の予測などの総合的判断能力の低下があったであろうことが考えられます。左右を見て、目で車が近づいてくるのはおそらく確認できていたでしょうから、そこからのスピード、到達時間の予測に誤差があったと考えられます。つまり、この道路を横断する所要時間の予測と実際にかかった時間の大きな差異が、今回の事故の原因ではないでしょうか。

 私の先輩(医師・研究者)二人(元スポーツマン)も、高齢男性となってから、同様の事故で亡くなっています。
 高齢者の脳とからだの機能の特徴は、頭でできると思うこと(自己効力感)と、実際にできること・していること(身体能力機能)に大きなギャップがあることなのです。たとえば、自動車のブレーキとアクセルを踏み間違えて加速する事例、青信号の間に横断歩道や警報が鳴り始めた踏切を渡り切れると思ったが、最後に慌ててしまい転ぶ事例、簡単に超えられると思った段差でつまずいて転ぶ事例などが生まれるのです。

 ドリフターズのテレビ番組のエンディングの名ゼリフ「風呂入れよ、歯磨けよ、顔洗えよ」などにちなんで、年齢を問わず、「禁止の道路を渡るなよ!」を徹底しましょう。同じような事故が起きないために。

 

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