夏から秋にかけては、全国各地ならではの名前や様々な形式の祭りが繰り広げられます。「祭り」と聞いただけで、心躍る人々も多いでしょう。

博多祇園山笠のイラスト 中でも、福岡市で毎年7月1日~15日に行われる博多祇園山笠はかた ぎおん やまかさ(「かさ」と濁らない)は、博多の総鎮守である櫛田神社の神事の一つで、豪快勇壮な祭りとして知られ、地元の関係者にとっては、「この2週間のために1年間働いている!」とまで言わしめるほどの愛着と誇りある祭りなのです。重さ約1トンの山笠(ヤマ)を舁き手(かきて)が担いで市内を走り回る様は、伝統を受け継ぐ博多っ子の心意気を感じます。

 スポーツ医仲間の一人、内田泰彦医師(健康リハビリテーション 内田病院:福岡県嘉麻市)は、長年この祭りの救護を担当しており、一度お招きにより、実際の光景を神社内で拝見したことがあります。「おっしょい」の掛け声の中、大きくて重い山笠を担いで全速力で移動する姿は迫力があり、大変圧倒されました。
 最終日に、「流(ながれ)※ ごとに山笠を奉納(櫛田入り)した後に、所定の順路を競って巡行する「追い山笠(ヤマ)」が行われます。「重量挙げをしながらマラソンを走るような」(内田医師)、男たちの激しい運動が繰り広げられます。

 2023年7月15日午前5時半頃、追い山笠の際、舁き手の一人、57歳の男性が転倒して山笠(6番山笠・千代流)にひかれて下敷きになり、死亡するという重大事故が起きました。
 転倒の原因は明らかなのですが、新聞報道では「背部を打って」とか「胸を打ったとみられ」などの記述があり、死亡に至る詳細な状況は必ずしも明瞭ではありません。転倒後1時間半後の7時頃に死亡が確認されており、いずれにしても高速のスピード、大きな重量、多くの舁き手かきての脚が重なって生じた転倒により地面に強大な力で叩きつけられ、結果、命をなくしたことは確かでしょう。

だんじり祭りのイラスト 大阪府岸和田市のだんじり祭りの「やりまわし」(重さ4トンを超える「だんじり」を若者たちが走りながら交差点に突っ込み、勢いよく直角に回って向きを変えることで、だんじり祭りの一番の見せ場)も、その迫力とスピードで人気を博していますが、だんじり自体の転倒や接触による重軽傷の事故が何度も発生しています。

 子どもたちにとっても、夏から秋にかけてのいろいろな祭りを見たり、参加することはとても楽しみな出来事です。私も小学生の頃、町内の神社の秋祭りに出掛けることが大好きで獅子舞いへの参加や出店での買い物、奉納餅投げなど、仲間と興じたものでした。特に景品付きの餅投げは、高い櫓の上から投げられた餅に向かって老若男女が一斉に殺到するため、人と人とがぶつかったり、転倒したりする子どもや中高年者の姿をしばしば見かけたものでした。

 祭りは、季節の行事としても、鎮守神社の神事としても、人々に愛される大切な存在でしょう。一方、非日常の場面に一瞬にして入るため、心構えが整わないうちに急な動作・行動を求められることから、転倒事故が起きるリスクが大きいことも事実でしょう。

 「後の祭り」にならないよう、安全で楽しい祭りが継続されることを希望しています。

 

流(ながれ)


博多祇園山笠を運営する基本の組織(区域)で、いくつかの「町」で構成されており、1つの流で1本の山笠を運営する。もともとは豊臣秀吉による「太閣町割り」に起源があると言われ、現在7つの流がある(千代流、東流、西流、東比恵流、土井流、中洲流、大黒流)。

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