今や多くの人々にとって、スマホ(スマートフォン)やガラケー(ガラパゴス携帯)といった携帯電話は、日常生活に欠かせない存在となりました。電車の中でも座っている人・立っている人を見ると、スマホを操作している人が大半で、それがまったく普通の光景となっています。
 スマホのある生活が当たり前となっている中で、ジョークでよく使っていたのは、「温泉に行く時に持っていくスマホは、どれがおススメ?」というフレーズ。答えは、「au(え~湯)」です。

 そのKDDI(au)に、先般7月2日、大規模な通信障害が起きました。情報開示と対応の遅れもあって、復旧に時間を要し、総務省も動かざるを得ない状況となりました。昨年、華々しくデジタル庁が新たに設置され、これからは「デジタル時代」と国が旗振りをし始めた矢先の重大事故でした。

 通信障害が起きている最中、滋賀県大津市では、市内で妻と登山をしていた60代の男性が転倒して右足を骨折。救助要請をしようとしましたが、二人とも携帯電話をauと契約していたため、連絡をすることができず、別の登山客に救急通報をしてもらい、ようやく防災ヘリで救助されました。

 警備会社セコムが運営する高齢者見守りサービスでも、影響が出たようです。この新しく開発された見守りシステムには、万一の時に救急ボタンを握るだけで救急通報できるものと(「マイドクター」)、生活空間で一定時間動きを確認できない場合、人感センサーが作動して自動的に通報されるもの(「安否みまもりサービス」)があるようです。最近、新聞紙上などでも、しばしば大きな広告を見かけるようになりました。

 高齢者の転倒・転落事故で、救急車で運ばれる事例の約6割が、自宅で発生しています(東京消防庁のデータより)。

図2-4:高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(令和元年中)東京消防庁「救急搬送データから見る高齢者の事故」より)

 特に、一人暮らしの高齢者にとって、こうした万一の時の見守りサービスは大変心強く、遠く離れて暮らす家族にも安心感を与えます。しかし、そのシステムの根幹は、電波通信(デジタル)が正常に作動していることです。したがって、電話も状況によっては途絶える場合があることを認識して、アナログ式の、たとえば安否を知らせる印(旗などを毎日玄関に立てておく)や非常ベルなどの工夫、さらには日頃からのご近所とのお付き合いも必要でしょう。
 デジタルも「転ぶ」ことがあるのです。

 

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