小学生時代に、47都道府県にまつわる言葉遊びを面白がって友達と話していたことを、ふと思い出した。

 「山はあっても、山梨県」

 「きれいな花が、埼玉(咲いた)県」

 「暗くて何も、三重(見えん)県」

 「教え上手な、高知(コーチ)県」

 「名前を名乗れ、長崎(名が先)県」

などと並んで、しばしば耳にしていたのが、

 「すべって転んで、大分(おお痛!)県」です。

 『一笑県名(いっしょうけんめい)』と呼ぶようですが、実に面白く、よくできた言葉遊びです。

 滑って転んで手をつく、尻もちをつくなどをして、手首や大腿骨に骨折をきたしたり、頭部を強打して、急性硬膜下血腫脳挫傷などの重篤な事態を招き、入院・手術ということになれば、からだは痛いし、心も痛いし、出費がかさんで財布までも痛くなり、まさしく「おお痛!」ということになるでしょう。頭に大ケガをしたともなれば、時には死に至る事例もあり、「痛い」どころでは済まない状態が生まれる場合もあります。

 床面自体が滑りやすいところ、床面に水や油、その他の物(野菜の切れ端、新聞・チラシ、買い物用ビニール袋、傘袋、ビニール傘など)が落ちていると、そうとは知らずに歩いていてその上に思わず足を乗せて滑り、そのまま転倒することがよくあります。特に「滑って転んで」の場合には、突然後ろに転ぶことになり、とっさに手でからだを支えることができずに尻もちをつくか、後頭部を強打する結果を生むこともしばしばです。

 実際、雨の日にコンビニエンスストアに来店した高齢男性が、先客の持っていた傘の先端から滴り落ちてきた雨水で濡れた床面を、いつも通りに歩いて足を乗せたところ、滑って後方に転び、脳挫傷をきたしてしまい、いわゆる植物人間になってしまったという悲惨な重大事故も報告されています。


2015年5月、歌手の五月みどりさん(当時75歳)は、自宅で仕事に向かう準備をしていて畳の上で足を滑らせて転び(バナナの皮を踏んで滑るような感じ)、第12胸椎圧迫骨折をきたして入院したと言います。和服で足袋を履いていて、畳の上で滑って転んだ事故でしたが、幸い、早期に復帰できました。入院中の安静を保っている間は、ヒマだったので、「おヒマなら来てね」と歌っていたとかいなかったとか。

 私が長年、初代理事長を務めた一般社団法人日本転倒予防学会代表理事:萩野 浩鳥取大学教授)で公募した「転倒予防川柳」にも、「滑って転んだ」場面を素材にした傑作がいくつもあります。

 「滑り止め つけておきたい 口と足」(東京都 佐川晶子 2015年大賞作品)

 「ああ無情 滑り止めに つまづいて」(東京都 稲川久美子 2016年佳作作品)

こうした川柳も、日常生活の中で意識しておくと、転倒予防につながります。時折遭遇する光景のオヤジギャグが「すべる」のは、ご愛敬でしょう。

 

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