天ぷらのイラスト 天ぷら(てんぷら・天麩羅・天婦羅)は、魚介類や野菜などの様々な食材に水と卵で溶いた小麦粉を衣(ころも)のように付けて、たっぷりとした油で揚げた代表的な日本料理です。

 江戸時代中期から普及し、「江戸(東京)の三味(天ぷら、寿司、そば)」の一つとされ、今は国内外の人々に広く愛されています。ちなみに、徳川家康の死因は、田中城(現在の藤枝市)で食した「タイの天ぷらが原因」という一説があるようです。

 さて、大手スーパーマーケット(サミット、東京練馬区の店舗)のレジの前に落ちていたカボチャの天ぷらを踏んで足を滑らせて転倒し、膝を負傷した男性(37歳)の損害賠償を求めた訴訟が、最高裁にまで上告(第一審東京地裁では客の訴えが認められたが、第二審では請求を棄却)され、結果、上告は受理されず、客の敗訴が確定しました。

 当初、男性はサミットから約6万円を受け取っていたようですが、店に責任があるとしてそれ以上の慰謝料などを求めて提訴していたものです。

 スーパーですから、客自身が総菜売り場で天ぷらを選びパックに詰めてレジまで持って行きますが、代金を支払う際に何かの拍子に買い物かごからカボチャの天ぷらが床に落ち、さらに具合の悪いことに、その男性が自らの足で踏みつけ滑って転倒したものでしょう。

 この事態は、日常の従業員の巡回による安全管理の想定には入っていないのは、当然でしょうから、今回の裁判所の判決は合理的と思います。ご本人は、ケガをしてお気の毒で
はありますが、当初の約6万円を店側の誠意と受け取って収めておけば、多くの時間と労力を費やすことはなかったように思います。

 しかし、スーパーでの転倒事故は決して珍しいものではありません。特に野菜売り場の前の場所は要注意です。

 かつて、神奈川県内のスーパーマーケットで60代の男性が、野菜売り場で転び、骨折をする大ケガをきたして、「転んだのは床が濡れていたからだ」と店側に責任があると提訴しました。結果、2100万円の賠償命令が出されました。


 その転倒の原因となった野菜は、サニーレタスでした。店側はサニーレタスをあらかじめ水につけてから販売していたのですが、買い物客が陳列棚から取り出す度にレタスからの水が床に垂れ、それが繰り返されて床が濡れた状態で放置されていたことが原因で客の転倒事故を招いたと判断されたものです。

 スーパーに限らず、コンビニエンスストアやデパートの食品売り場では、天ぷらや野菜の切れ端などの落下物や水濡れによる転倒事故はかなり多く、発生しています。

 天ぷらの調理のコツは、「タネ7分に腕3分」と言われます。スーパーなどで好物の天ぷらを買う時には、前方への視線を7分、下方への視線を3分として、よく注意して「江戸の三味」の一つを味わいたいものです。

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