茶道の道具のイラスト「茶碗・茶筅・棗・茶杓」 「お茶をよく飲むと転倒予防に効果あり」と、どこかの健康食品のコマーシャルのようですが、そうではありません。茶道を通して、からだを整えることを習慣化していると、転倒予防にも結び付くというお話です。

 千利休(1522~1591年、享年70歳)を始祖とする日本の茶道は、表千家裏千家武者小路千家の三千家が主流ですが、表千家流の一つに江戸千家流があります。川上不白(1719~1807年、享年89歳)を初代として、当代(10代目)の宗匠が川上宗雪氏です。
 宗雪宗匠と筆者のご縁は、私が長く理事長を務めていた日本転倒予防学会の第4回学術集会(岩手県盛岡市、菅栄一会長、2017年10月)において、宗匠をお招きして特別講演をしていただいたことから始まりました。
 以来親しくさせていただいており、図らずも当総研(文京区本郷)と宗匠のご自宅や教場(台東区池之端)がご近所なので、こちらから伺ったり、時にはお越しいただいたりして懇談をしています。

 家元が青春期に器械体操や水泳に親しんだことを背景に、剣道、座禅、日本の礼法、太極拳、ヨガなどの要素をも加味して創作したものが「体操十種」です。冊子やDVDも制作されて販売されています。
次のような10種の体操で構成されており、ゆったりとした動きで全身をほぐしながら自然にからだの姿勢や運動器を整えようと企画されています。
              
  内容


頭の位置と腹式呼吸「体操十種」DVD
②柔軟体操
③みんなで体操
④気孔太極 甩手スワイショウ
⑤八段錦
立居と歩行
⑦相撲式
⑧臥式 体幹法
⑨座敷 瞑想法
⑩ツボ体操  

 


 茶道の立ち居振る舞い、所作の改善に役立つばかりではなく、日常の健康保持・増進、そして高齢者の転倒予防にも結び付く効果が期待されるのです。
 2021年6月には、今度は筆者が江戸千家の同門組織である東京不白会の講習会に招かれ、「体も心も健やかに―転ばぬ先の杖と知恵―」というお題で講演を行いました。コロナ禍の中、オンラインのライブ配信でしたが、全国はもとより、米国カリフォルニアからの参加もあったと伺いました。
 講演後は、川上宗雪宗匠との対談形式で健康とからだのことについて、自由な意見交換をし、まさしく「喫茶往来」(お互いの家に招いたり招かれたりして、それぞれの自宅のお茶と語り合いを大切にすること)の楽しいひとときでした。
 500年の歴史を有し奥深い日本の伝統文化である茶道と、私たちのグループが1997年から創始してまだ25年の歴史ではありますが、「転倒予防」の活動とが自然に結びついてきたのは、誠にうれしく幸いなことです。

お茶を飲む男性のイラスト(座布団なし)

転倒予防 面白ゼミナール Archive