- 転倒予防 面白ゼミナール
- 2022.02.24
東京の街にも、冬の季節には、時に雪が降ることがあります。「明日の朝には積雪〇〇センチ…」と、天気予報で伝えられていても、実際にはそれほどではないこともありました。それでもうっすらと一面が雪景色となった東京の街を眺めるのも、それなりに風情を感じるものです。
とはいえ、雪面が凍って、ほとんど氷の上を歩くようになると、通常の革靴やパンプスなどを履いての通勤・通学、移動をしようとすると用心していても、つい転倒して手足の骨折をきたしたり、後ろに転んで頭を打ったりする人が必ず出てきます。場合によっては、救急車で病院に搬送される例も少なくありません。わずかに積もった雪でも、そのような事態になり、雪や氷に弱い東京人の姿をまざまざと認識させられます。
一方で、雪面や氷上を移動する競技をする選手たちが集まった北京での冬季五輪。コロナ禍であったり、ロシア/ウクライナ問題がある中で、厳しい世界情勢ではありましたが、何とか無事に閉会式を迎え、数々の名場面、印象的なエピソードや言葉も数多く生まれました。
ドーピング問題の渦中に登場した女子フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手(15歳、ロシア・オリンピック委員会=ROC)は、フリーの演技で信じられないような転倒が相次ぎ、4位に終わりました。団体の金メダル獲得に貢献した時の高度な技術と華麗な表現の片鱗はなく、ドーピング問題とその背景にある重く大きな圧力に押しつぶされ、氷上で自身のからだを安定させる脚力とバランス感覚を喪失しているようでした。
また、女子スピードスケートの団体追い抜き(パシュート)に続きマススタートでも、最終カーブで転倒した髙木菜那選手(29)。「最後は左脚が言うことをきかなくなった」と述べていますから、過密な競技日程、緊張と焦り、そしてそこに至るまでの心身の疲労の蓄積などが、重なってバランスを崩し、遠心力が強く働いて投げ出されるようにして防護マットにぶつかってしまったのでしょう。無念と悔しさの極みの中で揺れ動いていたにもかかわらず、表彰式での態度は立派でした。
同じ氷上の転倒ではありますが、ワリエワ選手の場合は、競技の公平さ・公正さが守られない暗闇のような背景に飲み込まれて起こしたものであり、髙木(菜)選手の場合は、五輪競技の厳しさが招いたものなのでしょう。