某全国紙に、先日、数度にわたり厚生労働省の啓発広告が掲載されました。西川きよしをはじめ、吉本興業の芸人たちが登場して、新聞には珍しい黒色を基調にした恐怖をあおるようなしつらえの紙面構成で、「スベっちゃダメよ!転倒予防 ムチャしちゃダメよ!腰痛予防」という赤字のキャッチコピーが目に飛び込んできます。

 昨秋より、私が初代理事長を務めてきた日本転倒予防学会(4月より一般社団法人日本転倒予防学会/萩野浩代表理事に移行)と厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課とが連携協力をして、高年齢労働者の職場での転倒予防の社会啓発に取り組んでいます。その際に、厚労省側から転倒予防と腰痛予防とを1セットにした広報チラシや資料が提示されていましたので、冒頭の広告も、この流れに即した啓発活動と考えられます。

 「お笑いも職場もスベリやムチャはアカン!!」と西川きよしが訴え、紙面のQRコードから数本のスペシャル動画が見られるようになっており、つまずき、滑り、階段の踏み外しなどの光景とその後の生活の不自由さが分かりやすく映像で示されています。笑いもあり、なかなかインパクトのある社会啓発の取り組みです。きっと時間と労力、そして予算もそれなりに要したと推察します。

 近年のお笑い芸人の中には、基礎訓練や修行が十分でないまま、早くから寄席やテレビなどに出演する人もあり、笑いを観客から引き出す芸とは程遠いレベルの例も少なくありません。まさしくお笑い界の「滑り」が目立つように感じています。

 テレビの長寿人気番組『笑点』では、先般、出演を続けていた名門の子弟である落語家が「修行をし直す」ことを理由に「卒業」しました。確かに、大喜利での彼の受け答えは「滑り」や「踏み外し」が多く、基礎訓練や下積み、勉強不足を感じる場面が多々ありました。そして、入れ替わりにメンバーとなった若手落語家の桂宮治(45歳)は、明るく元気で面白く、番組の「転倒予防」を大成功させました。

 そう言えば、「笑点」メンバー、最長老の林家木久扇師匠(84歳)は、2021年5月に自宅で転倒して左大腿骨を骨折しましたが、リハビリテーションを真摯に行ったおかげで驚異的な速さで現場復帰をしました。

 まさに「七転び八起き」の真骨頂となりました。

 「笑点」も出演者の交代で、一層元気になったようで、これから益々観客・視聴者を笑い転げさせてくれることでしょう。

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