「えば立て、立てば歩めの親心」と昔から伝えられているように、幼な子が成長・発達していろいろな動作ができるようになるのを楽しみにしている親の願いは、昔も今も変わりません。

 首の座り(3ヶ月頃)、寝返り(5ヶ月頃)、お座り(6ヶ月頃)などが順次できるようになると、パパもママも、おじいちゃんおばあちゃんも嬉しくなります。

つかまり立ちをしている赤ちゃんのイラスト そして、つかまり立ちができるようになった姿を見ると「立った!立った!」と、皆で大喜びします。

 四足歩行動物の赤ちゃんは、生まれた直後からしっかりと立つことができますが、人間の赤ちゃんがようやく立てるようになるには約10ヶ月近くかかります。

 そして、このつかまり立ちの時期の赤ちゃん(乳児:出生から1才未満まで/児童福祉法)は、人間の一生の中で最も転びやすい時期です。

 それは、からだ全体に比べて頭部の占める割合が大きく、支える体幹と下肢の筋力がまだ十分に発達していないため転びやすいのです。

 多くは、つかまり立ちの姿勢からバランスを崩して後方に転倒して、床面に頭部を打つものです。柔らかいマットかじゅうたん、畳の上ならまだ良いのですが、フローリングの硬い床であったり、屋外のコンクリート面やスーパーマーケット、コンビニエンス・ストア、デパート、ホテル、駅の構内などの硬い床面で頭を強く打つと、時には頭蓋内の出血(急性硬膜下血腫など)の重篤なケガをきたすこともあります。

 つかまり立ち姿勢からの転倒の他、乳幼児用のイスに座らせたけれど、ベルトをしていないため、赤ちゃんが立ち上がり、床面に墜落して大ケガという例もあります。

 「えば立て・・・」の親心は大切ですが、赤ちゃんの一挙手一投足を見守り、次に起き得るリスクを回避する注意を怠らないことが必要です。「親」という漢字は、「木の上に立ってじっと子どもを見ている」という意味が表現されているのですから。

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