- 健康医学 面白ゼミナール
- 2026.10.27
スポーツ庁の体力・運動能力調査結果によれば、「30代・40代女性の体力が2001〜2025年度の約25年間で低下傾向にある」とのことです。10月12日の「スポーツの日」に合わせて、各新聞・テレビ等で大きく報道されていました。
<年代別体力合計点の推移>

(共にスポーツ庁(2026)令和7年度体力・運動能力調査報告書を元にグラフを加工)
いずれの報道の論調もほぼ似通っていて、家事育児や仕事の両立で余暇がとれないこと、フィットネスジム等に通うための時間的・経済的な余裕が少ないこと、家も職場も女性への負担が偏っていることなどが挙げられていました。また、運動習慣については、「運動を週1日以上実施している」割合が、この25年間に男性では増えているのに対して、女性では減っていることが指摘されています。
そこで、スポーツ庁は、「女性向けのフィットネス業界と連携したプログラムの充実を図る」などと報道されていました。もちろん、これらの方策がまちがっているわけではないでしょう。ただし、総合的に見れば正しくもないと思います。
まずは、「運動」のとらえ方が、昭和の時代から抜け出ていないこと。つまり体育・スポーツの流れで「運動」をとらえているために、形態・方法・服装・履物・用具・機器なども一定のイメージの中でからだを動かすことが基本になっていて、「運動をしていますか?」の問いに対して、ラジオ体操・ウォーキング・筋力トレーニング・水泳・ゴルフ・テニス・サイクリングなどの特定の種目や方法のみが想定されています。
現在、世界的には「身体活動」という概念でからだを動かすことを考えようという方向性がはっきりしています。つまり、朝起きてから夜寝るまでの間の生活活動(歩く、またぐ、昇って降りる、持ち上げる、運ぶなどの日常動作、掃除・洗濯・買い物・調理・風呂洗いなどの家事一般、家庭内や職場内・地域内で行う様々な身体活動)を含めることが大切とされています。
例えば、自転車の前後の席に子どもを乗せて、ハンドルがふらつかないように力強く握って、颯爽と移動しているお母さんの姿はとてもたくましく見え、「母は強し!」と実感する光景です。また、子どもと公園で遊ぶのにも体力が要ります。「疲れを知らない子ども」は自由に動き回り、大ケガをしないように見守るのも骨が折れるものです。最近は、電動自転車でスイスイと移動する若いママも多く見かけますが、子育ては体力が要るものであり、子どもと共に親も、身体活動を広げ増やすことで健康なからだを育むことができるのです。
一方、高齢の親の看護・介護も、体力がないと継続してできないのです。つまり、日頃の家庭内や職場・地域での様々な活動を見直し、電気等で自動化されていることに慣れきってしまわないように「使わなければダメになる。Use it or lose it.」を銘記し、普段からからだを動かす(身体活動を増大する)ことを意識することが、この問題の正しい方策と思います。「普段の暮らしが自然な訓練」なのです。

(イラスト:自転車で前後に子どもを乗せて、たくましく進む30代のママ。
後ろからイヌも走ってくる。←Google Geminiで作成)
執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
詳しいプロフィール