<武藤所長 著作を語る>

#22『コーチング・マニュアル スポーツ障害』大修館書店 1991年

・発刊:1991年3月1日
・著:J.D.バージャロン、H.W.グリーン
・監訳:武藤芳照、高岸憲二
・発行:大修館書店
・サイズ:B5
・ページ数:213
・ISBN:978-4469161663

 

 

 

 本書の原本は、『Coaches Guide to Sport Injuries』(1989年刊、Human Kinetics Publishers)であり、「スポーツ障害の実態やその評価、救急処置、リハビリテーションの過程を紹介するものであり、スポーツ障害と基本的な救命法を必要とする生命を脅かすような障害に限定して」(著者まえがき)、記述されている。二人の著者は、医師ではなく、フリーライター/教育工学者(バージャロン)とスポーツ・トレーナー(グリーン)であり、スポーツ現場とコーチング教育に精通している著者の力量と米国のスポーツ医学とコーチングの奥深さを感じさせる。

  第Ⅰ部 スポーツ障害の理解

  第Ⅱ部 スポーツ障害の救急処置

  第Ⅲ部 スポーツ障害後の対応

の全20章の内容であり、一貫してコーチの視点に立って、スポーツ障害のこと、救急処置のこと、リハビリテーションのことがきわめて具体的にわかりやすく記述されている。

 原文について、下記の9名の分担訳者(スポーツ医およびスポーツ・トレーナー/理学療法士)により英文和訳の作業を行っていただき、それを基盤に武藤・高岸が全体の調整と監訳を行った。

訳者:園田昌毅、井上大輔、松本高明、吉見知久、山際哲夫、山田均、有吉護、村井貞夫、浦辺幸夫

 「監訳者まえがき」では「スポーツ障害の発生要因は、➀個体の要因・②方法の要因・③環境の要因に分けられる」と記していた。現在は、それ以後の研究活動の積み重ねにより、様々な外傷・障害・事故の発生要因については、➀を「個の要因」と改め、加えて④として「指導・管理の要因」の4つの発生要因として分析・整理しており、武藤自身の研究史を改めて知る契機ともなった。

 スポーツ障害の予防と救急処置、そしてリハビリテーションに関わるそれ以後の著作に結びつく書となった。また、共監訳者の高岸憲二医師(九州大学整形外科学教室出身)とは、これ以後も、日本整形外科スポーツ医学会の活動を共に推進するなど、長い交流が始まった原点ともなった書でもある。

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