山梨県富士吉田市は、2021年10月10日の「転倒予防の日」に、日本初の「転倒予防都市宣言」(ころばないまち)を打ち出した街です。日本の最高峰(海抜3776メートル)であり、世界文化遺産にも登録された富士山を間近に生活するこの地の人々は、いつも富士山が心の内にあるようです。

 日本転倒予防学会の理事の一人であり、『医療と介護のための爪のケア』(武藤芳照監修、高山かおる・渡邊洋・杉原鼓編、新興医学出版社、2021年刊)の共編者でもある渡邊洋医師(渡邊整形外科院長)が中心となって、宣言以降も市医師会、市立病院、市行政などと連携して、地道に転倒予防の活動に取り組んでいます。

 先日の9月10日(土)には、富士吉田市民会館「ふじさんホール」で、富士北麓転倒予防市民公開講座が開かれました。特別講演(国立病院機構東名古屋病院 脳神経内科 臨床研究部長 饗場あいば郁子医師の「要介護者における転倒予防のコツ伝授」)及び転倒予防実践(座長:富士吉田市立院副院長/整形外科 天野力郎医師、(1)理学療法士 稀代康裕さん、(2)管理栄養士 桑原美樹さんの講演、(3)スポーツ推進委員4名による「ここ富士体操」の指導)が行われ、私は特別講演の座長と「本日のまとめ」を担当しました。

 それぞれの専門性に即した内容が、100名を越す聴衆にわかりやすく語られ、時折うなずきつつ、皆さん熱心に耳を傾けていました。

 

 「まとめ」は富士吉田市にちなんで次のように整えました。


 :不老不死は無理でも、元気で長生き

「不二山」とも呼称される富士山のふもとのこの地でも、不死はありえないけれど、元気で長生きを目指そう。

 :事例から学ぶ

実際に起きた転倒・転落事例(身近な人の事例や有名人の事例)を他山の石として、同様のことを起こさないようにしよう。

 :良く食べ、良く眠り、良く動く

栄養バランスを工夫して、三食しっかり食べ、日中は日光を浴びて歩き、良く運動し、スポーツを行う習慣をつけて続けよう。

 :市立病院と市民生活部が市民の健康拠点

市民の病気の診断・治療・リハビリテーションの中心医療機関である市立病院と市役所の健康政策の担い手である市民生活部の連携・協力により、市民の健康拠点が一層充実できるようにしよう。

 :誰もがいつかは 転びやすい人に

若くて元気だった人も、健康に自信がある人も、いつかは誰もが転びやすい人になります。できる限り転ばないように、転んでも大ケガをしないように、ケガをしても早く適切な治療により回復できるようにしよう。


 

 今、この健康標語は、富士吉田市の各所に掲示されているようです。

 


関連コラム #31『日本初の転倒予防都市宣言』 も併せてご覧ください。

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