テレビコマーシャルで強烈な印象を与え、爆発的な人気を誇ったメガネ型拡大鏡。銀座のナイトクラブのホステスたちが、勢いよくお尻で踏んでも壊れない、しなやかな構造と、洗練されたデザインが売り物です。 拡大鏡のことをドイツ語では「ルーペ(Lupe)」と言います。「ルーペ」の名が付いた、某社の商品を使用している高齢者が増えていますが、注意しなければならないのは、これを通常の老眼用の眼鏡と錯覚して使っていることです。

 独立行政法人 国民生活センターの資料「メガネ型拡大鏡による見え方―視力、老眼などを矯正できるものではありません―」(令和3年2月4日)によれば、「使用中に眼がくらくらした」「気分が悪くなった」等、見え方に関わる異常の事例もありますが、より注意しなければならないのは、メガネ型拡大鏡を着用したまま外出し、移動している時に、転倒・骨折をきたした、次のような事例があることです。

 「80歳代の父がメガネ型の拡大鏡を着用したまま歩行し転倒。肋骨を骨折した(2019年5月受付、60歳代女性)」

独立行政法人 国民生活センターHPより

 老眼の症状としては、近くのものが見えにくくなるので、老眼鏡のメガネや拡大鏡を着用するのはごく自然のことなのですが、メガネ型拡大鏡を着用したまま外出すると、足下視力(足下の床・道路、物などを見る視力)が低下して見えにくくなっているので、階段・段差、道路の凸凹などが正確に把握ができずに、つまずいたり、足を踏み外して転倒・転落を発生し、結果、骨折をきたすことになってしまいます。

 「〇〇〇ルーペ」は、その名のごとく、拡大鏡なのです。そのことをしっかりと理解して、外出して歩く時には、目を見開いて足下もしっかり見て、転ばぬようにしたいものです。

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