東京都港区にあるJR山手線高輪ゲートウェイ駅の名前は、2018年に一般公募され、6万件を超える応募総数・36件の新駅名候補の中から、JR東日本は、第1位の「高輪」は採用せず、第130位の「高輪ゲートウエイ」を採択した。江戸時代には、江戸の玄関口(ゲートウェイ)であったという歴史的意味とこの区域の再開発のコンセプト(構想)の新たな玄関口を活かした命名という。公募は宣伝効果を狙ったものだったかのような気もするが、今般、高輪ゲートウエイシティの大階段での転倒が大きな話題となり、くだんの名前が再び社会の耳目を集めることとなった。

 大階段は、高層ビル「リンクピラー1」の北棟と南棟の間にある。両サイドに人が二人ほど通れる幅の階段があり、中央部分がベンチのように座れる仕様となっている。憩いの場やイベントスペースとしての利用を見込んでいるようだ。


<階段を下から見たところ>

ベンチは階段3段分ほどあり、座る面が木で作られており、上から見ると境目が分かりづらく目の錯覚を起こして、階段と間違えて足を踏み外して転倒する人が相次いだようだ。実際にケガをした人が2人という。

 <階段を上から見たところ>

 色々な事故に関する安全管理上の警句に、「ハインリッヒの法則」がある。1件の重大事故の陰には、29件の軽微な事故があり、300件のヒヤリハット事例があるというもの。2人のケガ人の確認は、58件のケガ寸前の事例と600人のヒヤリハット事例があることを示唆している。

 元々駅の階段では、特に手荷物を両手に持って降りる人の転落事故が起きやすい。列車から降りて、慌ただしく移動して階段を降りる時には、手荷物を気にしながら歩みを進めて行くために、階段の一段一段の端を見切ることが容易ではなく、危険が高まる。結果、転落して骨折や頭の大ケガをきたす事故が起きやすい。

(両手に荷物を抱えて駅の階段を急いで下るイメージ:by Google Gemini)

 すでに亡くなった漫才師の内海桂子(2020年97歳没、漫才コンビ「ナイツ」の師匠)は、83歳(2005年)の時、東京駅の階段を降りる際に踏み外した。34段転がり落ちて手首の骨折をして、入院・手術をした後に復活した事例が有名だ。

 ゲートウェイを冠するこの地区の名前は、世界への玄関口となるようにとの願いが込められて名づけられた。この大階段も、転倒予防の注意を喚起する玄関口の存在として長く愛されることを期待したい。


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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