お笑い芸人・コメディアンの小堺一機さん(70歳)が、3月31日に自宅で転倒し、左鎖骨・肋骨を骨折して左肺気胸のため4月3日に入院し治療の後、同13日に無事に退院したと、所属事務所から公表された。司会や俳優もこなし、歌・タップダンス・モノマネ芸もできる多才ぶりで人気を博し、「エンターティナー」(萩本欽一)とも呼ばれるほどだ。

 日生劇場でのミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』(ロアルド・ダールの児童小説:『チョコレート工場の秘密』、1964年が原作、4月7日~29日公演)の主人公チャーリーの祖父「ジョーじいちゃん」役を休演することになった。

 高齢者(65歳以上)が前方に転倒して上体を強打して、鎖骨(左右に1本づつ)や肋骨(左右に12本)を骨折することは少なくないが、両方の骨を同時に骨折するのは、それほど多くはないだろう。前方に倒れた時に何か大きくて固い物体があったためだろうか。

 いずれにしても折れた肋骨(循環器系・呼吸器系を保護する機能を有する)の尖端の一部が肺を傷つけ、気胸をきたしたようだ。気胸は、肺を包む二枚の胸膜の間(胸膜腔)に外界の空気が侵入して肺を圧縮するものだ。たとえれば、車のタイヤがパンクしてつぶれるように、肺に穴が開いて肺がつぶれてしまう事態を招くリスクがある。

 気胸をきたせば胸の痛み、胸部圧迫感、肩や背中の痛み、呼吸困難、せきなどの症状が出る。穴が小さく軽度であれば安静にしていれば自然にふさがるが、肺がある程度つぶれた場合には、漏れた空気を外へ逃がす処置(胸腔ドレナージ/排出の意味)が必要になる。また、重症な場合には、手術がなされることもある。

 一般的に、転倒により胸を強打して肋骨骨折をきたした場合には、こうした気胸をきたすリスクがあることを認識して、肋骨骨折をした後に胸の痛みや呼吸器の症状が続く時には、迷わず呼吸器科を受診して精査することが必要だ。

 小堺さんは、前髪が薄くなっていることと自身の名前(一機)を絡めて自虐ネタにしているが、今回の転倒・骨折は、重症にならずに誠に幸いであったが、まさしく「危機一髪」だったろう。


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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