『アルプスの少女ハイジ』は、スイスの作家ヨハンナ・シュピリの小説を原作とした、日本のテレビアニメ(1974年)が、良く知られています。天真爛漫で活発なハイジのお友達のクララ。19世紀、フランクフルトの大富豪のお嬢様、脚が弱く車いす生活で、ほとんど外出することのない生活。ハイジが故郷のスイスの祖父の元に帰り、クララもそこを訪れ生活するうちに元気を回復して、ついには「クララが立った!」という名場面が生まれます。

工場のイラスト 当時のフランクフルトは、工業化まっしぐらの都市で、大気汚染がひどく、太陽光の照射もさえぎられるほどでした。そこで育ったクララは、紫外線を浴びることがない、まさしく「深窓の令嬢」で、自身の皮ふでビタミンDを形成することがなく、骨も筋肉も弱いまま年齢を重ね、「脚の弱い女の子」となっていたのでしょう。日光浴のイラスト(女性)

ハイジと共に、アルプスの自然豊かな環境で過ごすうちに、太陽光・紫外線をたっぷりと浴びて、自分の皮膚でビタミンDを作り出し、ミルクやチーズなどの乳製品も良く口にして、骨も筋肉も丈夫にしっかり成長し、ついには、立つことができるようになったと推察されます。

UVカットサンバイザーのイラスト そして時は流れ、最近では、オゾンホールと有害紫外線と皮ふがんなどの病気との関係が強調され、また紫外線により「美白」が損なわたり、シミやそばかすを増やすというような情報が広がり続け、「日光浴は有害」とされ、それを過剰に信じた結果、ビタミンD欠乏症をきたす若い女性やママさん、そして赤ちゃんが増えていると報告されるようになりました。

 もちろん熱帯地域のように、太陽照射が激烈で、強力な紫外線を浴び続ければ、皮ふがんや皮膚障害をきたすことも決して稀ではないでしょう。
 しかし、日本での太陽照射の時間と強度では、そのような状態はまず起こりえず、皮ふを痛めることなく、皮ふでビタミンDを形成して、丈夫な骨や筋肉を形成することができるのです。

 かっては、赤ちゃんを「おてんとうさま(御天道様)の光を浴びて丈夫に」と、皆が大いに日光浴を推奨していました。

ビタミンD ビタミンvitaminは、生命に必要な栄養素の一つで、生物の生存と生活に微量ながら絶対に必要な物質です。A、B、C、D、E、Kなどがあり、体内で合成されないのですが、ビタミンDだけは、紫外線の作用で、自身の皮ふで作ることができるのです。

 何事も「過ぎたるは なほ及ばざる如し」。健康に関して、あまりに過剰な対応は感心しません。とりわけ、一部の科学的事実をもって、普遍的な真実であるかのように語るのは、「かた(騙)り」に近いかもしれないでしょう。

 


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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