俳句を詠んでいる男性のイラスト川柳は、実に面白いものです。「シルバー川柳」や「サラリーマン川柳」などの入選作を見聞すると、思わず「ニヤリ」「ニコッ」とするものです。
 元々は、江戸期の前句付けの点者・柄井川柳にちなんでその名称があるようですが、五・七・五の十七文字に、風刺、皮肉、機知、ユーモアの要素やセンスを巧みに織り込んで表現する日本語文化が誇る短詩型文学の一つです。

 日本転倒予防学会は、その前身の転倒予防医学研究会の時代より、「転倒予防川柳」を2011年から全国公募し、優れた作品を顕彰してきました。


「口先の 元気に足が 追いつかず」(埼玉県 掛川二葉、2011年大賞作品)

「つまずいた 昔は恋で 今段差」(長崎県 福島洋子、2014年大賞作品)

「いつまでも 密と思うな 骨と愛」(神奈川県 佐々木恭司、2021年大賞作品)


 これらをはじめとするたくさんの傑作が毎年寄せられ、拝見するのが私の大いなる楽しみの一つになっています。

 昨年2022年は、諸般の事情で募集は休止となりましたが、2023年の「転倒予防川柳」の募集が、7月18日(火)から8月31日(木)までの期間で始まっています。

 今回は、主催:日本転倒予防学会、共催:厚生労働省、事務局:同省内SAFEコンソーシアム1)という体制で行われています。かつ、これまでの賞(大賞、佳作、準佳作)に加えて、「厚生労働省特別賞」も加えられ、国の社会啓発事業と位置付けられる川柳公募となりました。
 このような大きな事業に至ったのは、今年3月に公示された「第14次労働災害防止計画」(14次防)の中で、労働者の高年齢化に伴い増加が予測される「転倒災害の増加に歯止めをかけること」が明確に打ち出され、国として、転倒予防の啓発を積極的に行うことが求められるようになったことが、大きな理由です。

 小さな研究会が始め、コツコツと継続してきた社会啓発のための「転倒予防川柳」が今や国の事業として、しっかりとした体制で展開されることになり、感無量です。これまで、数多くの応募作品を受け付け、整理し、順次選考作業を真摯に行ってくれていた研究会及び学会事務局のスタッフたちの労苦がようやく報われたように感じています。
 また、何よりもこの川柳事業に興味・関心を持って、応募していただいた全国の数多くの市井の作者の皆さんにも、感謝したいと思います。

 そして、新たな体制で応募が始まり、これまで以上にユーモアとウィットあふれる面白い「転倒予防川柳」が数多く集まることを大いに期待しています。

 

  

 

1)SAFEコンソーシアム


 増加傾向にある日常でも起こりうる労働災害問題を自分ごととしてとらえ、顧客や消費者も含めたステークホルダー全員で解決を図っていくため、趣旨に賛同した企業、団体でコンソーシアム(共同事業体)を構成し、加盟団体が連携し、表彰や広報活動を実施する。SAFEは、Safer Action For Employeeの略で、従業員の幸せのための安全アクションを推進する活動体の名称。

 

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