エスカレーター(escalator)は、和訳すれば「自動階段」「動く階段」です。ちなみに、動く歩道は、エスカレード(escalade)と呼びます。屋内・屋外にある、いわゆる階段は固定された構造になっていますが、それでも上り下りに転ぶことが多々あります。まして、動く階段であれば、転ぶリスクは極めて大きくなります。乗る時、降りる時にうまく足を運べずに転んだり、乗っている時に、ついバランスを崩して転ぶことも少なくありません。
 東京では、エスカレーターの右側を、大阪は左側を空けるのが、暗黙のうちのルールのようになっていますが(どうして2列に並ばないのかと、いつも思うのですが)、その空いている側を急いで上り下りする人がぶつかって、結果、転ぶ事故もあります。


エスカレーターを駆け下りる人のイラスト 俳優の宝田明さん(2022年、87歳没)は、83歳の時に、羽田空港の下りエスカレーターに乗っていて、間もなく終わりというところで、後方から来た女性がぶつかってきて前方に転び、視覚障害者用の黄色い点字ブロックに顔面を強打し、「鮮血タラタラ」の状態になったことを、憤りを持ってテレビ番組で語っていました。

 今年の1月、落語家・6代目桂文枝かつら ぶんし(79歳)の有楽町での高座を拝聴しましたが、「まくら」で語っていたのが、自身のエスカレーターでの転倒の経験でした。
 大阪のあるデパートを昨秋訪れ、エスカレーターに乗っていて降りる間際で床面につまずき、前方に転倒。その先の靴売り場の店員さんが「大丈夫ですか?」とすぐに駆けつけ、親切に対応してくれて大ケガには至らなかったとのこと。テレビの長寿番組「新婚さんいらっしゃい」の司会を長年務め、イスから横に転がり落ちるのは、一つのギャグとして行っていましたが、前に転ぶ練習はしていなかったと笑わせました。しかも「つまずくのは、靴の先が上がっていないのも原因」「良い靴あります」とくだんの店員に勧められ、結局、2足購入したそうです。
 転んでも、それをネタに聴衆を笑い転がせる、まさに名人芸でした。

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