親鸞を開祖とする浄土真宗本願寺派に属する築地本願寺は、最近、従来のお寺のイメージを変えるような新企画を次から次へと打ち出し、社会的話題を呼んでいます。元銀行員の安永雄玄宗務長の主導による事業展開は、さすが宗教観を大きく変えた親鸞のDNAなのかもしれません。

 その築地本願寺で、10月8日(金)・9日(土)に「第1回安心シニアライフ・エンディングフェア」が開催されました。 

 私が理事長を務める日本転倒予防学会の事務局は、築地本願寺のすぐ目の前に位置するビルにある、(株)朝日エルの中に所在しています。そのご縁で今回は、同社の中村和代社長からの依頼で、本願寺のフェアの一環である「終活セミナー」のうち転倒予防講座の講演を担当しました。

 お題には指定がありました。「歩いてお浄土に往こう」(往生の「往」であるところがミソです)です。私が業務執行理事の一人を務める公益財団法人運動器の健康・日本協会が、以前標語を公募した際、優秀作品の一つに選ばれたものに、「棺おけまで 歩いてゆこう」があります。講座のお題は、この標語や「ピンピンコロリ」などと同様の、高齢者の率直な願いを巧みに、ユーモアを持って表現しています。

 講演は、築地本願寺の境内にある第二伝道会館蓮華殿という講堂で行いました。コロナ禍対応で窓が開放され、密を避けるためイス席の配置も工夫された会場には、100名あまりの参加者が集い、熱心に聴いていただきました。

 何やら「ムトウ教」の辻説法をしているかのように感じつつ、和やかな雰囲気の中、お話をしました。


転倒予防が目指しているものは、転倒を防ぎ、転倒による骨折や頭の大ケガを防ぎ、寝たきり・要介護や死亡事故を防ぎ、一人ひとりの高齢者が健やかで実りある日々を過ごすことができるように、というものです。

 歩いて棺おけに入ることや、歩いてお浄土に往くことはできませんが、生きている間は、イキイキと自分らしく元気で生きることができるように、これからも全国のお寺ともうまく連携して、辻説法をしようと考えつつ、築地本願寺を後にしました。

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