高齢者は65歳以上の人のことを言い、65~74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と分けることがあります。

 晩年の人生を「前期」と「後期」に区分されたくはないと思う人も少なくないでしょう。

 かつて、旧東京厚生年金病院(現JCHO東京新宿メディカルセンター)で、「転倒予防教室」を運営していた時は、対象となる高齢者を3段階に分けて「ヤング・オールド」(65歳~74歳)、「オールド・オールド」(75歳~84歳)、「スーパー・オールド」(85歳以上)、と呼んでいました。「まだ、高齢者とは呼ばれたくない」という気持ちが強い65歳~74歳あたりの年代の方には「ヤング・オールド」という呼称は気に入られていたように思います。

 少子高齢化が進展する中で「国が70歳までの雇用確保へ」と動き始めたことで、高年齢労働者の労災(労働災害)が増えています。

 「やっと縁 切れた上司が 再雇用」(サラリーマン川柳より)という心境を嘆いている分には苦笑いで済みますが、特に「ヤング・オールド」層の高齢者の労働現場では、転倒・転落事故が多く起きています。厚生労働省のデータによれば、労働災害における「休業4日以上の死傷者数」(114,669人/令和2年)のうち、その原因として最も多いのが転倒で24%、次いで墜落・転倒が17%と、両者で4割を超えており、労災の中でも極めて大きな問題となっています。

 若年層と高年齢労働者を比べると、男性で約2倍、女性で約5倍の発生率であることも示されています。

 高齢になるにつれて、身体機能(運動機能、感覚機能、認知機能)が衰え、それまでとは違った不慣れな業務(保安、清掃、警備等)と不慣れな職場環境の中で、転倒・転落・墜落事故が起きやすくなっているのでしょう。

 自分で「これはできる」と思っていること(自己効力感)と実際にできることに大きなギャップがあることが、こうした事故の基盤になっていることも確かでしょう。

 まずは、転倒予防の合言葉「ぬ・か・づけ」を職場に普及・徹底させましょう。

「ぬ」れている所は、すべって転びやすい。
「か」いだん(階段)・段差はつまずいて転びやすい。
・  片「づけていない所は転びやすい。

 一人ひとりの高齢者が元気でやりがい・生きがいを持って、その業務に向き合うことができるように、「ぬ・か・づけ」を皆で意識することで、重大事故を防ぐことができるのです。「意識が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる」のですから。

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