#10『あの人も転んだ この人も転んだ』

 人は転ぶものであり、いつでも誰でも転びます。その結果、大腿骨、脊椎、手首(橈骨)、肩(上腕骨近位部)などの骨折や頭部外傷(急性・慢性硬膜下血種など)をきたして、救急搬送されたり、入院・手術となることが少なくありません。

 したがって、転倒予防は学術的研究の対象としてきわめて重要な意義を有すると共に、この超高齢社会における解決すべき社会的課題の一つなのです。それと共に、一人ひとりの高齢者やその家族にとっても、今日一日の生活・活動の中で、転倒をせず、万一転倒しても大ケガをきたすことなく安心・安全に過ごすことができることが大切です。

 2月22日の「ねこの日」(ニャン(2)、ニャン(2)、ニャン(2))に因んで)に、発刊された『あの人も転んだ この人も転んだ -転倒噺ばなしと予防川柳-』三恵社)では、前段に古今東西の著名人の転倒・転落事例を列記して、その発生状況や発生場所などを振り返り、分析した記述と予防への提言をまとめています。


 

 古代エジプトのツタンカーメンに始まり、源頼朝、小林一茶、三遊亭圓生、フォスター、キュリー夫人、山本周五郎、ウイリアム・ホールデン、松尾和子などの過去の事例から、志位和夫さん、五月みどりさん、美川憲一さんらの現代の事例などについて、記述・解説しています。

 

 

 後段では、日本転倒予防学会の「転倒予防川柳」の過去の大賞・佳作作品を紹介すると共に、医学的解説、転倒予防のコツを記載しています。この他「ぬ・か・づけ」転倒予防、「転倒予防いろはカルタ」など、言葉のチカラで一人ひとりの意識を変えて、転倒による骨折や頭の大ケガを予防しようという趣旨が全頁にわたって貫かれています。

 長年の書籍作りの仲間である北村正之さん(元・雑誌『暮しの手帖』編集者)イラストレーター久保谷智子さんの知恵と感性にも助けられ、まちがいなく面白い書籍に仕上がっています。

 2020年10月に行われた日本転倒予防学会の市民公開講座での講演の内容の骨子がこの書におおむね収められています。講演を舞台袖で聞いていただいた作家五木寛之さんが「学者の話はおおむね難しい。だがドクター武藤の話はべらぼうに面白かった」『週刊新潮』2020年10月29日号)と大絶賛していただいたのに気分を良くして、編集・制作作業により一層力を入れた書となったものです。

(2021.4.16)

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