- 健康医学 面白ゼミナール
- 2024.05.22
習慣というのは面白いもので、中学生時代から、早起きして朝食前に勉強、学校の授業後は、部活動に熱心に参加していた。70歳を過ぎた今も、おおむね5時頃には起床して、煎茶をゆっくりと飲み、新聞をじっくり読んでから、こうした原稿書きなどの作業を続けている。そして、午前中にはコーヒーを一杯、午後のおやつ時には、スタッフと共に紅茶を楽しむような習慣を続けている。一般的には、煎茶には20mg、コーヒーには60mg、紅茶には30mg(いずれも100ml中)のカフェインが含まれている。ちなみに玉露は160mg、麦茶は0mg。
こうしたカフェインが適度に含まれるお茶類は、古今東西、嗜好飲料として、人々に愛され、心身のリラックスとともに、元気の素になり、仕事・作業の効率を図る効果がある。日常的にも「お茶を入れました」「ちょっとお茶でも・・」「茶飲み話に・・」「一杯のコーヒーから・・」「茶飲み友達」などと、ごく普通の暮らしの潤いになるのがお茶類であろう。
しかし現在は、カフェイン含有量の多い「エナジードリンク」や缶コーヒー、果てはカフェイン錠剤(薬局で購入可能)を日常的に服用して、ゲームにのめり込む中高生・大学生などの若者が増えていることが社会問題になっている。もちろん受験勉強でそうした飲料を飲む生徒たち居るだろう。
エナジードリンクや缶コーヒーの中には、一本当たり80mg〜140mgもの量のカフェインが含まれている商品もあるようだ。一日の摂取量としては、一般成人400mg、妊婦200mgまで(欧州食品安全委員会)とされている。
カフェインを過剰摂取すれば、疲労感を軽減して、見かけ上は「元気いっぱい」の感覚になるが、からだの限界を超えて活動するリスクがあり、後に疲労困憊に陥ったり、体調を崩したり、救急車で搬送されたり、最悪の場合には死に至る例さえある。
かつて1992年、京都競馬でのエピソード。競走馬に大量の「アリナミンV」を飼葉に混ぜて飲ませ、レース後のドーピング検査で基準値以上のカフェインが検出されて、罰せられた事例があります。当時のこの商品のテレビCMでは、米国俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーが、「だいじょうV」と語っていたが、「大丈夫」ではなかった話。
嗜好飲料は、あくまで「毎日の生活にうるおいとゆとりをもたらすものとして口に楽しむ」(『新明解国語辞典』三省堂)もので、「アルコールや薬物などに依存する病的な傾向。それを絶たれると、禁断症状などが起こる」(同)「嗜癖」飲料には決してしないことが大切だ。特に、心身の成長・発達時期の中高生には、特にそれを啓発することが求められる。
執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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