- 健康医学 面白ゼミナール
- 2025.12.16
博多華丸(55歳)・大吉(54歳)コンビは、福岡大学落語研究会の同期生で、福岡から上京して、NHKテレビの『あさイチ』の司会者をはじめ今や超人気の漫才コンビです。年末に、大吉さんが転倒して顔を大ケガして、しばらく同番組をお休みしていました。そこに「12月に多くなる転倒を防ぐ」という趣旨の企画が上がり、私のところに急な出演依頼が来ました。
12月11日(木)朝8時15分過ぎ、連続テレビ小説『ばけばけ』に続く同番組の最初の話題で、冬の転倒予防が取り上げられました。現在、交通事故死よりも転倒・転落死が約3倍も多く、重大な社会的な課題になっていることが、まず伝えらえれ、12月になると、なぜ転倒事故が増えるのかにつき、事前のリモート取材で尋ねられた質問につき、①外が寒くて部屋にこもりがちで運動不足になること、②マフラーやコートなど防寒着を身につけることが増え、厚着になり身動きがしづらくなること、が伝えられました。
そして、予防のポイントとして「身のまわりの人で転倒した人がいたら・・・・どんなときにどんなふうに転んだか聞くことで転倒の予防になる」ことを強調しました。
その後、大吉さんの転倒は、自宅マンションの裏で手荷物を持っていた状態で、2~3cmのわずかな段差でつまずいて、前方に転んで顔を打ち付けたことが、ご自身から語られました。
「つまずいた 昔は恋で 今段差」
(日本転倒予防学会・転倒予防川柳、2014年大賞、長崎県・福島洋子)

普段よく行き来する自宅まわりや道路などで、わずかな段差につまずくことはしばしばあるものです。夕暮れ時の駐車場で、車止めにつまづいて転倒、という例も少なくありません。そのとき両手に荷物を持っていると、普通ならば身を支えるために手を前方に出して怪我を避けることができるのですが、そのまま前に倒れ込む結果、顔や頭を打ち付ける結果になってしまいます。
したがって両手に荷物を持っていて万一転びかけた時には、迷わずその荷物を手放して、両手を前方について身を守るように心がけたいものです。
『ばけばけ』の主題歌は、夫婦デュオのハンバートハンバートによる『笑ったり転んだり』ですが、まさしく笑ったり転んだりの大吉さんの貴重な転倒経験話でした。
イラスト;『あの人も転んだ この人も転んだ 転倒噺と予防川柳』pp103~104、武藤芳照著、日本転倒予防学会監修、三恵社、2021年刊より(イラスト:久保谷智子)
執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
詳しいプロフィール
