#05「わくわくうんなんピック」
転倒予防と言えば、高齢者の転倒・骨折や頭部外傷、寝たきり、要介護、死亡事故を防ぐことが主体である。
もちろん、今目の前の高齢者への対応が重要であることは間違いない。しかし、今、青壮年で元気一杯の人々と、10年、20年、30年も経れば、次第に高齢者の年代に入っていく。さらに言えば、今の子どもたちもいずれ青壮年となり、将来は高齢者となる。「子ども叱るな来た道じゃ、年寄り笑うな行く道じゃ」の言葉通りだ。
したがって、転倒予防、介護予防の観点からは、「究極の介護予防は元気な子供達をたくさん育てること」を訴え続けている。
11月8日(日)に、公益財団法人 運動器の健康・日本協会(東京都文京区 / 丸毛啓史理事長)の「2020年度日本賞」の表彰式があった。私も業務執行理事及び審査委員の一人として列席した。
今回の日本賞・最優秀賞(賞金100万円)は、島根県雲南市子ども政策局子ども政策課の「幼児が楽しく体を動かす日々の保育につながる体力測定」が受賞した。中山間地域の同市では、平成25(2013)年に「雲南市幼児期運動プログラム」を策定し、幼児期からの運動遊び、身体活動の促進に積極的に取り組み、その成果の評価法として考案されたのが「わくわくうんなんピック」である。その名称には、3・4・5才児がワクワク元気よく運動プログラムに参加できるように、また、オリンピック・パラリンピック精神を継承できるようにとの願いが込められている。
「子どものからだと心を育む、からだが動けば心が動く、心が動けばからだが動く」を具現化した地域社会こぞっての長年の事業であり、全国そしてまもなく少子高齢化社会が現実化する東アジアの国々のモデル的な活動であろう。
実は、雲南市内にある身体教育医学研究所うんなん(所長:狩野明芳)は、保健・医療・介護・福祉・教育・スポーツといった、諸分野・領域を連携させた複合的な事業を展開しており、設立当初(2006年4月)より、私は運営委員長を務めている。子どもへの取り組みは、同研究所の最重要事項の一つであり、市役所、教育・保育関係者、市民、県内の大学研究者、市医師会等と連携し、「わくわくうんなんピック」の事業は、この研究所としても深く関わってきた。
今回の運動器の健康・日本協会の日本賞の選考過程で、私は審査委員の一人として参画したが、この事業については利害関係者の一人として、本件の最終選考手続きからは辞退している。
それでも、他の審査委員の決裁により、文句なく日本賞最優秀賞に選考されたことに大いに喜びと誇りを感じている。現場の関係者の努力と熱意に改めて祝意と謝意を表したい。
なお、2021年度・日本賞の申請手続きも始まっているので、ぜひ、全国の地道で良い取り組みを推薦(自薦・他薦)していただければ幸いである。
(2020.11.12)