Dr.ムトーのショート・コラ

 

♯17『辞書は舟 』


 三浦しおんのベストセラー本『舟を編む』を原作とするNHKのテレビドラマ『舟を編む~私、辞書をつくります~』(池田エライザ主演)が、6月に再放送される。以前BS放送で見た時に、監修者の日本語学者(柴田恭兵)の「辞書は、言葉の海を渡る舟」というセリフが印象深く残った。

 日本転倒予防学会の特別講演にお招きして以来、私の講演や著書について評価・紹介していただいている作家の五木寛之さんは、「この年になって言葉や漢字の新しい意味を知ることもある。結構面白いものですよ」(讀賣新聞:2025年1月1日より)と述べている。

 私のオフィスと自宅の仕事机の前には、『新明解国語辞典』(第八版、三省堂、2020年)と『大辞林』(第四版、三省堂、2019年)及び『ポケット版外来語新語辞典』(成美堂出版、2022年)が置いてある。何か言葉について確認する必要が生じた時に、まずはこの3冊の辞書類で調べることを常としている。インターネッットで調べることもあるが、やはり辞書の幅広さと深さには叶わないと思う。たとえて言えば、辞書は海で、インターネットは水泳プールなのかもしれない。

 子どもから高齢者までの健康や運動・スポーツ、医学・医療、身体教育等に関わる文章を記述することが日常となっているこの頃、辞書という舟で言葉の海を渡るのは、大いなる楽しみでもある。

 


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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