Dr.ムトーのショート・コラ

 

♯16『旅の医学 』


 「ふらんすに行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」

で始まる萩原朔太郎(1942年、55歳没)の詩『旅上』。「旅情」の味わいも醸しつつ、「旅立ち、旅に出る、旅にのぼる」という意味を示しているのであろう。

 人生は一つの旅のようであり、小学生の頃の修学旅行や遠足に始まり、卒業旅行、新婚旅行、国内外の出張、研修旅行、家族旅行、スポーツ応援ツアー、町内会旅行等、晩年に至るまで、数多くの旅を積み重ねていく。「人生百年時代」とされる今、シニア(中高年者)は、国内外に数多くの旅を楽しんでいる。一方、旅の最中に、外傷・障害・病気・事故に見舞われるシニアの事例は枚挙にいとまがない。

 今般、旧知の二人の熟練の内科医(溝尾 朗医師/患者目線のクリニック虎ノ門院長、鈴木 紅医師/都立墨東病院副院長)の編集、武藤監修の新刊本『シニア旅行の健康医学読本~自ら健康に 水から健康に~』(水道産業新聞社刊)を制作し、5月には発刊される運びとなった。

 表紙のデザインは、仲の良いシニア夫婦が、明日からの旅の支度を整えて、談笑している光景が描かれ、大きなスーツケースの近くには、愛猫が気持ちよさそうに寝ている。これからのそれぞれのシニアの旅が、楽しく新しい良い思い出となるために、本書が役立つことを願っている。


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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