- 健康医学 面白ゼミナール
- 2025.10.27
水虫(足白癬)とは、昔、農作業、特に田植えをしていて足にツブツブができてかゆくなり、田んぼの水の中に住む虫に刺されたと考えられていたことからその名があるようです。実は、虫が原因ではなく、白癬菌というカビ(真菌)による皮ふの感染症なのです。スポーツ選手に多く広がっているため、英語ではアスリートフット(スポーツ選手の足)という表現まであります。
日本人では、5人に一人が白癬菌を有していると言われるほど、頻度の高い皮ふ病です。かゆいからと、外用薬を塗って症状が軽くなると治療をやめてしまう人が多く、結果、長く真菌が皮ふの中に潜んで、次第に他の部位の皮ふに広がったり、爪に入り込んだりするのです。「カビは、とにかくしつこい」のです。転倒予防の観点からは、特に爪白癬に要注意です。
2025年10月に群馬県高崎市て行われた日本転倒予防学会第12回学術集会(梅原里美・上内哲男両会長)のランチョンセミナー(エーザイ(株)共催)では、この爪白癬について取り上げられ、私が座長を務めました。愛甲美穂看護師(湘南鎌倉総合病院)による『フットケアの実践』と南 健皮膚科医(南外科泌尿器科 皮膚科)による『爪白癬の診断と治療』の講演が行われ、いずれも専門的な内容を実際の対応や症例を供覧しながら分かりやすく解説していただきました。お二人のお話を、下の「座長まとめ」として総括しました。
爪白癬は、「爪水虫」とも呼ばれ、足の爪が白く濁り、厚くなり、変形し、ボロボロと崩れやすくなり、脚の筋力が低下し、立つ・歩く・またぐ・昇って降りるなどの日常生活の移動動作に支障をきたし、バランスを崩しやすくなって、結果、転びやすくなるのです。「たかが水虫、されど水虫」なのです。
「水虫は治らない」とされていた昔とは違い、今は非常に良い外用薬があり、また特に難治性のものや爪白癬に対しては内服薬(まとめに記したホスラブコナゾール:商品名ネイリンなど)の効果的な医薬品があります。また、外来診療で行える抗原検査で、白癬菌の存在を迅速・簡便に正確に確認できるようになっています。
脚に不安なく元気に歩くために、水虫をなくし、転倒による骨折や頭の大けがを防ぎましょう。
執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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