<武藤所長 著作を語る>

#26『女性のスポーツ医学』南江堂 1996年

 

・編集:越野立夫、武藤芳照、定本朋子
・発刊:1996年11月1日
・発行:南江堂
・サイズ:A5・322p
・ISBN‏ : ‎ 978-4524212651

 

 

 

 

 産婦人科医(越野)、スポーツ医(武藤)、運動生理学者(定本)の三者が協働して編集し、合計93名の執筆者(この内、女性は29名/31.2%)により制作された。丁度アトランタ・オリンピック開催の年に発刊されたが、その場には、「ファッショナブルでパワフルでビューティフルな」(本書Ⅰ-B、三井悦子「女性スポーツの変遷史」より)女性たちの活躍の姿があった。

 「ヒトは生まれ、育ち、成熟し、やがて老化して、死を迎える。このライフサイクルの中で、女性は初経、妊娠、出産、閉経という、女性の生物学的機能に伴うからだの変化をたどる。そして、その分だけ女性は、男性以上に多様な経験と思考を保有する機会と場を得る。
 そのような女性のライフサイクルの中で、運動・体育・スポーツは、様々な意義と、効果を持つと同時に、男性にはない医学的事象と問題点を有する。
 女性の特性とライフサイクルに即して、合理的で楽しく、運動・体育・スポーツが行われることで、いつの時期でも女性の「からだを育む」(体育の本来の意味)ことができれば、「女の一生」を、今まで以上により豊かにできるかもしれない。時代の流れと社会の変化、文化の変容を背景にしつつ、女性の視点を大切にして、スポーツ医学に関連する広い領域の科学的事実を基に、本書は企画・構成・執筆された。」(序文より)

 目次、構成は下記。

 Ⅰ.女性のスポーツ指導の科学的基礎

 Ⅱ. 月経とスポーツ

 Ⅲ. 妊娠とスポーツ

 Ⅳ.閉経とスポーツ

 Ⅴ.女性のスポーツに伴う外傷・障害・疾患

 Ⅵ.女性の体重調節とスポーツ

 Ⅶ.女子スポーツ選手の医事管理

 Ⅷ.女性のスポーツの特性と医学的注意

[トピックス]
「ブルマ」の歴史、女の子の遊び、生理用品、AIDS、「冷え性」、コンタクトレンズ、ピアス、日焼け、ピル、化粧品、乳房切除後の補正用品 等

 『子どものスポーツ医学』(1987年刊)に続く、南江堂の「性・年代別スポーツ医学シリーズ」の第2弾であり、自身が教授昇格して落ち着いて教育・研究活動に従事できる時期となり、また、国際水泳連盟(FINA)医事委員として、スポーツ現場で日々活動していた、いわゆる「脂が乗った」40代後半の著作となった。

 「美しく実りある人生を願う女性たちと、より充実した運動・体育・スポーツの実現に努力している人々にとって、本書が、新たな刺激を与えることができれば、幸いである。」(序文より)の言葉に、本書発刊の思いが凝縮されている。

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