Dr.ムトーのショート・コラ

 

 

♯14『「あい」のない文 』


  クラリネットをこわしちゃった』(作詞:石井好子、作曲:フランス童謡)の歌では、「ドとレとミのおとがでない・・・どうしよう・・」と、「オーパキャマラド」のスキャットと共に子どもの心情がコミカルに歌われます。

 新年早々、締め切り間際の7つほどの原稿作成のために、パソコンのキーボードと格闘していました。ある時から、「Iに」と「7や」と「8ゆ」の入力に不具合が生じ、医学、教育、体力、芦、石、会など非常によく使う表記が円滑に入力できなくなってしまいました。
とりわけ「I」(アイ)の欠落は、とても困りました。急遽、別のキーボドを取りつけて、当面は文章を作成するようにしました。日頃の生活や仕事で、「あい(愛)」がいかに大切かを改めて認識した次第です。

 それで思いだしたのは、米国の著名な交響楽団の指揮者と演奏家のエピソード。公演の当日、ある楽器の演奏家が、愛用の楽器の不具合が生じ、ある音が出ないことに気づき、急ぎ指揮者の下に相談に。しばし沈思黙考していたその指揮者曰く、「君、大丈夫!今夜の演目の曲では、その音は使わない」と。その卓越した記憶力と一つの音の重さを物語るお話でした。

オーケストラのイラスト

 

 


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
詳しいプロフィール

Dr.ムトーのショート・コラム Archive