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#03「病院における転倒対策」

 

 「人は転ぶもの」(作家 五木寛之さん)だが、病院では通常の生活環境よりも患者さんの転ぶリスクが高い。特に、急性期型医療施設よりも慢性期型医療施設の方が約3倍転倒率が高いことが知られている。

 元々の患者さんの病気に伴う内なるリスクに加えて、リハビリテーションが進むにつれて活動の質と量が高まるからだ。

 とはいえ、病院のスタッフも日々の業務に忙しく、24時間、全ての患者さんが転ばないように注意して張りついているわけにはいかない。いかにスタッフの負担を大きくしないで、より効果的な転倒予防対策を講ずるかが鍵となる。

 『活動と転倒』(2016年, 医歯薬出版社)の著書もあり、長年、転倒予防とその人の活動との関係性を重視して研究してきた藤田医科大学病院リハビリテーション医学 Ⅰ 講座の大高洋平教授のオンライン講演「病院における転倒対策」の座長を務めた(日本転倒予防学会 第7回学術集会, 2020年10月11日(日), 東京)。


オペレーション基地の光景

 大高教授は、中学・高校・大学と剣道部の主将を務め、剣道六段の達人だ。「剣医一如」という言葉のように、剣道も医学も同じように極める姿勢を感じさせる攻めの姿勢で、病院における転倒予防を考えようとのお話であった。

 まとめてみると4点に集約される。

 第1は、良いバランスが大切。活動と安全、アクセルとブレーキのバランスをうまく取り、患者さんの活動性を保ちながら、安全性も担保すること。

 第2は、動けば転ぶ。移乗、歩行等、活動の質と量が高まる、動くことが大きくなる時が転ぶリスクの高い時。転べる人が転ぶ。移乗で「異常」(いじょう)に転ぶことに注意する。

 第3は、変化を予期すること次の動作を予期していなければ、患者さんを支えていたり、触れていても間に合わない。次に起きる個々の動作(思わぬ動作をも想定する)を予期して、転倒を防ぎ、万一転倒した時の外傷を防ぐ。

 第4は、医療の質と患者安全の向上を図ること。

 藤田医科大学病院は、努力と苦労を積み重ねて、J C I(Joint Commission International)という第三者の視点から医療施設を評価する国際非営利団体の認証を取得した。転倒予防対策は医療の質と患者安全の両面から重要であり、転倒の発生パターンを知って、病棟単位での予防対策、特にシステムとして環境への介入が必要である。

 この4点の言葉の頭文字を並べると、大高教授の名前「よ・う・へ・い」となる。

右:大高洋平教授

共催のエーザイ(株)の担当者と共に。無事終わって3人共にホッと笑顔。

(2020/10/19)

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