Dr.ムトーのショート・コラム

 

 

♯07『天空のアングラ劇場』


 5月4日に、アングラ演劇の牽引者として知られる劇作家・演出家のから十郎じゅうろうさんが亡くなりました(84歳)。1日午前に自宅で転倒して、急性硬膜下血種を来したためでした。転倒して、大腿骨骨折等の大ケガをして寝たきり・要介護を招くことへの予防が大切と、日本転倒予防学会を創設(2014年)し、長年活動を続けていますが、実は頭を打ってそのまま死亡する事故も重要な社会的課題なのです。その原因の一つが急性硬膜下血種です。

 1970年前後の時代、「アングラ(アンダーグラウンド)」という目新しい言葉に、自由や前衛、反権力などの強い意志を感じて、多くの若者が、唐さん率いるあかテントの「状況劇場」の力強い奇抜な表現と行動に惹かれ、ライバルの寺山修二(1983年、47歳没)の率いる「天井桟敷」と共に、両者の乱闘事件を含め、新たな演劇文化を動かしていました。

 唐さんは、その寺山の命日と同じ日に、人生の幕を降ろしました。

 今頃は、天空で、「アンダーグラウンド」ではなく「アッパーグラウンド」劇場を立ち上げて、寺山と二人で熱い議論を戦わせていることでしょう。

スポットライトの当たるの舞台のイラスト(小)

 


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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