- 著作を語る
- 2021.06.29
<武藤所長 著作を語る>
#19『スポーツと疲労骨折』南江堂, 1990年刊
・発刊:1990年5月1日
・編集:武藤芳照, 伊藤晴夫, 片山直樹
・発行:南江堂
・サイズ:B5
・ページ数:300
・ISBN:978-4524256662
筆者が整形外科医として臨床的研究に携わった最初の仕事が、疲労骨折であった。過労性骨障害とも呼称されるこのスポーツ障害は、古くて新しいスポーツ医学の大きな課題の一つである。
本書の「あとがき」にも記したように、世界的な疲労骨折の教科書として広く読まれ、数え切れないほど引用されている名著『Stress Fractures』(Michael Devas, 1975年, 英国)に触発されて企画・構成、制作された。
本書の執筆者には、筆者が常勤医として勤務し、1981年8月に東京大学に転任してからも非常勤医師として勤め続けた東京厚生年金病院整形外科(森 健躬 部長)の当時のメンバー全員(18名)が参画したものである。
ハードカバーにラグビーの動的写真の表紙、B5判全300頁の大部の本書は、下記の目次・構成で制作された。
I. 疲労骨折
II. 脛骨疲労骨折
III. 腓骨疲労骨折
IV. 中足骨疲労骨折
V. 大腿骨疲労骨折
VI. 骨盤部疲労骨折
VII. 膝蓋骨疲労骨折
VIII. 足部疲労骨折(踵骨、舟状骨、種子骨)
IX. 上肢疲労骨折(上腕骨、尺骨・橈骨、手指)
X. 脊椎の疲労骨折(頚椎、胸椎、腰椎)
XI. 体幹部疲労骨折(鎖骨、胸骨、肩甲骨、肋骨)
XII. 骨・関節疾患に伴う疲労骨折(慢性関節リウマチ、骨粗鬆症、人工関節)
付章 疲労骨折部位別症例報告集
各章の記述に関わる重要な文献も総覧できるようにしつらえられており、「今後の疲労骨折の研究のためのきわめて有用な資料となることは疑いない」(巻頭言、森健躬)の通り、それ以後、疲労骨折の論述をする際や学会発表において、本書がしばしば引用されてきた。
疲労骨折を介して、「日本のスポーツ医学の振興とその実践に非常に大きな意味を持つ本」(発刊によせて、三島濟一 東京厚生年金病院院長/日本医師会副会長)として、スポーツ医学・整形外科学の教科書的成書として長く活用されることを希望している。
ちなみに、本書の南江堂の編集担当者の一人が小立鉦彦 現同社取締役会長であり、本書の制作を介して、長い交流が始まる契機となったのは嬉しい記憶である。