- 著作を語る
- 2021.06.10
<武藤所長 著作を語る>
#16 『水泳の医学Ⅱ』ブックハウスHD, 1989
・発刊:1989年12月25日
・著:武藤芳照
・発行:ブックハウスHD
・サイズ:B5判
・ページ数:232頁
・ISBN-13 :978-4938335373
映画や小説などで、第1作が好評だった時に、第2作が企画・制作される。スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レイダース』に次ぐ『インディ・ジョーンズ』、山崎豊子の小説『白い巨塔』の続編を事例に「あとがき」では「Ⅱ」の意味を書き綴った。やはり前作の方が面白い、第1作を超えた、第2作も第1作に勝るとも劣らないなどと、それぞれ評価が分かれるもの面白いが、少なくとも第1作の基盤の上に第2作が成り立っていることは変わらないだろう。
『水泳の医学』第1作は、1982年に発刊された。その後の水泳のチームドクター、整形外科医としての診療、大学教師としての教育、研究、社会活動等の蓄積を基に文章を認めた。
「幸い、この7年間のうちに、私自身が水泳の現場を通して、知識・経験・論考・調査・研究・失敗・反省・感激等を積み重ねてきた。それらをもとにした文章は、今まで以上に感情移入をした部分がある。その意味では、より実践的な内容とすることができたと思う。……中略……本書は、こうした私のスポーツ医学者として、自分史的な色彩を随所に折り重ねている。そして、水泳を通して出会った人々から得たいい言葉と現場のセンスも私なりに脚色した。」(著者あとがきより)
本書発刊後、スポーツ医学の立場からの様々な活動を行うに当たって、「2.競泳 高所トレーニング」の項は、長野県東御市の高地トレーニング施設「G M Oアスリーツ・パーク湯の丸」の企画・建設・運営に結びつき、「7.水泳障害」の項は、日本水泳連盟の『「スタートの段階指導」および「プール水深とスタートの高さに関するガイドライン」』(2019年3月)の作成に結びついたと考えている。
そして、「13.水泳のチームドクター」や「14.現場のためのスポーツ医学」の項は、100冊目の著作『スポーツ医学を志す君たちへ』(南江堂、2021年)の執筆活動の重要な素材となった。
その意味では、「あとがき」に記した「 『水泳の医学Ⅲ』に向かって、また一歩ずつ、あゆみを重ねていきたいと思う。」の『書籍Ⅲ』は実現していないが、書籍のタイトル以上の形と内容の実践的な活動に拡充していたと思う。