- 著作を語る
- 2020.11.17
<武藤所長 著作を語る>
第4作『水泳療法の理論と実際』金原出版(株)
・1983年10月30日発刊
・編集 宮下充正 武藤芳照
・発行 金原出版(株)
・B5版 219ページ
水泳の医学的応用に関わる本格的な医学書である。
(1)医書出版の古参の金原出版社(株)からの発行であること。
(2)執筆者24名中、20名が医師であること(他の4名は、体育学・スポーツ科学の研究者、水泳の指導者)。
(3)全体構成の主体を占める各対象・各疾患・障害と水泳の項の内容は①適応と禁忌②意義および効果③国内外における現況④指導手順⑤注意と問題点と、運動処方の理論と実践が統一されていこと。
(4)取り扱っている対象、疾患・障害は、乳幼児、妊婦、喘息児、脳性まひ児、自閉症児、身体障害者、脳神経疾患(てんかん、脳卒中片麻痺、精神薄弱)、心疾患児、循環器疾患、呼吸器疾患、骨・関節疾患、皮膚疾患、健康・体力の保持増進、水泳中の疾患と事故と、医療上重要なものが数多く含まれていることが「本格的な医学書」たる所以である。
水泳が他の競技種目とは一線を画す特性として誇るべきことは、赤ちゃんから高令者、障害のある人に至るまで、その実践対象が実に幅広く、また、治療や病状の軽減・改善あるいは予防に少なからぬ効果を有することだ。
それが故に、スポーツ医学の普及・発展の中でも最も重要な課題の一つとなり得るのが水泳療法であるという認識が各執筆者に共通している。
巻頭言の「発刊によせて」は、当時の(財)日本水泳連盟会長の故・藤田明氏(2001年, 93才没)に寄稿いただいた。世界水泳選手権に参加した日本代表選手の1人の女子中学生が水泳を始めた動機は、「医師の勧奨による小児喘息の治療にあった」エピソードなどを盛り込み、現場にとって「またとない教育用資料となることを」と励ましていただいた。
東京厚生年金病院整形外科(当時・現J C H O東京新宿メディカルセンター)から東京大学教育学部体育学研究室に転籍したのが1981年8月1日。宮下充正教授(当時・日本水泳連盟科学技術委員長)の下で助教授(日本水泳連盟同委員)を務めて間もなく、こうした「本格的な医学書」を上梓できたのは、水泳の持つ縁と力によるものだと、今改めて思う。