2026.03.11
- Dr.ムトーのショート・コラム
- 2026.03.11

Dr.ムトーのショート・コラム
#26『「たらちね」から「たるみ尻」へ』
新聞の楽しみの一つに下段に掲載されている商品・雑誌・書籍・各種イベント公演等の広告がある。先日、某新聞で見つけたものが、中高年女性用の補正下着の広告だ。「老け胸、ぽっこり腹、たるみ尻」を補正できるという新たな商品のようだが、このキャッチコピーが秀逸だ。女性がいくつになっても美しい体形でいたいと切に願う心情を、巧みにとらえて「老ける」「ぽっこり」「たるむ」などの表現を取り入れて、思わず目が行くように仕掛けられている。しばしば見かける「若みえ」の言葉同様に、いくつになっても若く見える・見せる、若く見られたいというのは、女性に限らず、中高年の変わらぬ心理だろう。
女性のからだに関わる古典の言葉として良く知られているのが、「たらちね」だ。
「のど赤き 玄鳥ふたつ屋梁に居て足乳根の母は 死にたまふなり」(斎藤茂吉『赤光』)
など、短歌では「母」や「親」に掛かる枕詞とされる。乳房が垂れるの意味は誤りで、乳が満ち足りる・満ちあふれるの意味とされている。
古典落語には「たらちね」という演目もある。「たらちね」の言葉のやわらかさと品の良さに比較すると、「たるみ尻」は、やや直截的過ぎるかもしれない。とはいえ、これに替わるうまい表現はシリません。
執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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