Dr.ムトーのショート・コラ

 

#25『片岡仁左衛門の流儀』


 「顔よし・声よし・姿よし」、歌舞伎界の至宝と称される片岡仁左衛門(15代目、81歳)。人間国宝(重要無形文化財)にして、文化勲章受章者でもあり、舞台はもちろん、テレビドラマ・映画でも数多くの役をこなし、人気・実力ともに当代随一の役者だ。「孝夫」時代のテレビドラマでの「八代銀四郎」(『女の勲章』)や「眠狂四郎」の艶のある男の魅力は、今も語り草になっている。

 NHK総合の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(1月13日・火)で、「~心で魅せる、芸を貫く~」とのサブタイトルの下、日頃の仁左衛門の舞台裏の生の姿が映し出されていた。

 普段は笑顔を絶やさないが、いざ稽古となると、あたかも求道者のような表情に変わる。「芸の完成は、かげろう」と、常に完成形を求め続けている。また、若い弟子たち(とりわけ梨園以外からこの道に入った役者たち)には、厳しい言葉を投げかけ、幾度もダメ出しをするが、そこには温かさと深い愛情がにじみ出ていた。

 仁左衛門は、2013年(69歳)に、右肩腱板断裂で手術を受けているが、その局所は、長年の舞台出演による過酷な使用で擦り切れていたと語られるほどだった。歌舞伎の表現は、かくも役者の身体を酷使する。

肩腱板

 この番組では、稽古場の片隅で、一人で黙々とストレッチングや、柱に手を添えつつスクワットを行う姿があった。常に身体の調整を怠らない真摯な姿勢と一流人の流儀が印象的だった。

 


執筆者:武藤芳照
(東京健康リハビリテーション総合研究所 所長 / 東京大学名誉教授 / 医学博士)
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