- 著作を語る
- 2023.01.10
<武藤所長 著作を語る>
第50作『運動器のおはなし マンガ 大人も知らないからだの本』学習研究社 2005年
・監修:「運動器の10年日本委員会」
・編集:東京大学大学院教授 武藤芳照
・構成・執筆:東京大学教育学部学生制作委員会
・協力:エーザイ(株)
・インタビュー協力:工藤公康(読売巨人軍)
・制作:(株)学習研究社
・仕様:B5版、全ページカラー、96ページ
2005年に制作され、発刊後は増刷が続き、15万部以上が全国の小学校などに無償で配布され、しかも英語版も制作された「大ベストセラー」となった書である。
当時の「運動器の10年」日本委員会(委員長:杉岡洋一・九州大学名誉教授、現公益財団法人運動器の健康・日本協会)の運営委員会の席上、武藤が「子ども向けの本を制作して運動器の啓発を図っては…」と発言したところ、同席して聞いていたエーザイ(株)の田芳郎氏が興味を示し、後日、東大の武藤の研究室に来訪したことから、本書の企画・制作が始まることになった。
教育学部身体教育学コースの3年生の学部生への授業「身体教育学概論」を受講する学生らに、「運動器に関する新しい本を作る。参画したい者は授業が終わった後、会議室に集合!」と声をかけ、まずは集まった学生たちによる学生制作委員会が発足された。身体教育学コースの学生6名(鎌田真光、稲垣良隆、金子佳憲、寺西絵莉加、大平琢哉、竹田直也)、教育行政学コースの学生1名(工藤鉄也)の計7名。企画制作の議論を重ねた制作委員会から、最初に相談されたのが「マンガにしても良いですか?」ということであった。スポンサーとなるエーザイ(株)の田氏とも協議して、「OK!」を出し、その後はひたすら待ち続け、あらすじができたところで、制作担当の(株)学習研究社の鳥居香氏と作業打ち合わせを積み重ねて、順次工程を進めていった。
学生らの大学卒業までには何とか仕上げたいとの思いを共有しつつ、数多くの医師、研究者、小学校校長、スタッフ及びその家族に協力いただいて、完成にこぎつけることができた。
「鳥に似ている 母」「女性のような 担任の先生」「スポーツにくわしい、ちょっと変わった 校長先生」「脱走するホネ」など、ユニークなキャラクターたちが登場し、面白くてタメになる話が満載の本が出来上がった。
序 章 運動器のしくみ ~ホネ脱走編~
第1章 変化するからだ ~身体測定編~
第2章 からだと栄養 ~調理実習編~
第3章 スポーツ上達法 ~テレビ中継編~
★ 運動器あれこれ ~夏休み宿題編~
第4章 ケガとのつき合い方 ~大会直前編~
第5章 からだと生活習慣 ~お正月編~
終 章 卒業式
冒頭にも書いたが、発刊後、大反響を呼び、各所から「ほしい」「読みたい」との声が届いたために増刷を続け、累計15万部を全国に配布し、英語版を制作するまで至った。さらには、東京大学を訪れた国連アナン事務総長にもこの本を持って学生代表(鎌田真光君/現 東京大学医学部講師)が挨拶・報告する機会(2006年5月)にも恵まれたり、東京大学総長賞を受賞したり、運動器の10年(Bone and Joint Decade)世界大会で表彰されたりと、国内外で高い評価を得られたのは大変喜ばしいことであった。
学生の力と日本が誇る文化であるマンガの力の相乗効果によって誕生したこの1冊は、傑作の教育図書として、後世に語り継がれることであろう。